住宅ローンを検討するとき、「自分の年収の何倍まで借りられるのか」は多くの人が気になるポイントです。
一般的な目安などはさまざまな例が挙げられますが、最も重要なポイントは「手取りから無理なく返済できるか」という点です。
この記事では、住宅ローンは年収の何倍まで借りられるのか、理想的な倍率から平均的な数値まで徹底検証します。無理なく返済するコツも解説するので、住宅ローンの借入を検討している人は、ぜひ参考にしてください。
【この記事でわかること】
- ●住宅ローンは年収の何倍が目安?
- ●住宅ローンの借入に重要な返済負担率とは?
- ●住宅ローンの借入額を決めるうえで重要な要素
- ●年収を考慮して住宅ローンを無理なく返済するコツ
住宅ローンは年収の何倍が目安?
住宅ローンの借入を検討する際、「年収の何倍まで借りられるか」は大きな判断基準になります。ここでは、よくいわれる数値やデータとして以下について解説します。
- 平均的な借入額は年収の6〜7倍
- 理想的な借入額は年収の5倍程度
平均的な借入額は年収の6〜7倍
住宅ローンの平均的な借入額は、一般的に年収の6〜7倍だといえます。
住宅金融支援機構の「2024年度フラット35利用者調査」によると、フラット35の利用者における年収倍率の平均は以下のとおりでした。
※参考: 2024年度 フラット35利用者調査(P12)|住宅金融支援機構
上記の年収倍率を踏まえると、全体の平均値は約6.4倍となり、多くの利用者が6〜7倍の範囲で住宅ローンを借入していることがわかります。
理想的な借入額は年収の5倍程度
前述したデータを踏まえ、住宅ローン借入額を無理なく設定するには、年収の5倍程度に収めるのが理想といえます。
なぜなら、返済額が年収に対して過度に高くなると、教育費や車の買い替え、老後資金など将来の支出に対応しづらくなるからです。年収の5倍程度に抑えることで、家計にゆとりを残しながら返済を続けやすくなるでしょう。
また、金利が上昇した場合でも返済額の増加に耐えやすく、ボーナス減少など収入変動へのリスクにも対応しやすい水準です。長期的に無理のない返済を考えるなら、年収の5倍前後が最もバランスの取れた借入額といえます。
ただし、年収倍率はあくまで目安であり、数字だけで判断するのは危険です。同じ年収でも、家族構成や教育費、車の維持費、将来のライフイベントなどで家計の余裕は大きく変わります。
さらに、金融機関の審査基準も異なるため、同じ年収でも借入可能額は同等ではありません。年収倍率はあくまで参考値とし、毎月無理なく返済できる金額で資金計画を立てることが重要です。
住宅ローンの借入に重要な返済負担率とは?
住宅ローンの借入額は「いくら借りられるか」ではなく「無理なく返せるか」が重要で、その指標となる項目として「返済負担率」が挙げられます。
返済負担率とは、収入に占める年間の住宅ローン返済額の割合のことで、「返済比率」とも呼ばれます。ここでは、住宅ローンの借入に重要な返済負担率として、以下の数値やデータについて解説します。
- 一般的な返済負担率は25〜30%
- 理想的な返済負担率は25%未満
一般的な返済負担率は25〜30%
住宅金融支援機構の「2024年度フラット35利用者調査」によると、フラット35の利用者における返済負担率の平均は以下のとおりでした。
【総返済負担率の割合】
2024年度の平均:23.2%
上記の割合を見ると、返済負担率30%未満で借入している利用者が最も多く、次いで25%未満で借入している人が多いことがわかります。
これらのデータを踏まえると、一般的な返済負担率はおおむね25〜30%だといえるでしょう。
ただし、あくまで一般的な上限に近い水準であり、教育費や老後資金などを考えると、この上限いっぱいまで借入すると、家計に余裕がなくなるリスクがある点に注意が必要です。
理想的な返済負担率は25%未満
長期にわたり、無理なく返済を続けるためには、理想的な返済負担率として手取り収入ベースで少なくとも25%未満に抑えるのが望ましいといえます。
この水準であれば金利上昇やボーナスの減少、子どもの進学などによる支出増があっても、急に生活が圧迫されにくくなるでしょう。
2024年度における、フラット35利用者の平均値も23.2%であることから、現実的な返済負担率は25%未満が適切だといえます。
住宅ローンの借入を検討する際は、年収倍率だけで考えるのではなく、自分の手取りと将来のライフイベントを踏まえた返済負担率を意識することが、無理のない資金計画の第一歩といえるでしょう。
住宅ローンの借入額を決めるうえで重要な要素
住宅ローンの借入額を決めるためには、年収倍率や返済負担率のほかにも考慮すべき要素があります。ここからは、借入額を決めるために重要なポイントとして以下を解説します。
- 将来的な収入の変化
- 返済期間
- 完済時の年齢
- 金利変動の可能性
将来的な収入の変化
住宅ローンの借入額を決める際は、将来的な収入の変化を考慮することが重要です。現在の年収だけを基準に借入額を決めてしまうと、将来の収入減少に対応しづらくなるおそれがあります。
たとえば、共働きから片働きへの変更、転職や独立による収入の変動、早期退職や時短勤務など、収入が下がる可能性は誰にでもあります。反対に、昇給やキャリアアップが見込める場合でも、それを前提として借り過ぎるのはリスクがあるでしょう。
将来の働き方のイメージを家族で共有し、「現在より少し収入が下がっても返済を続けられるか」という視点で借入額を検討することが大切です。
返済期間
返済期間は、毎月の返済額と総支払額のバランスを左右する重要な要素です。
返済期間を長く設定すると月々の返済額は抑えやすくなりますが、その分支払う利息が増え、総返済額は高くなるでしょう。反対に、返済期間を短くすると総返済額は減りますが、毎月の返済額が増えるため、家計にかかる負担は重くなります。
無理に短期で返そうとせず、教育費のピークや老後資金の準備なども踏まえながら、返済負担率を抑えつつ、無理のない範囲でできるだけ短く返済することを目指すとよいでしょう。
完済時の年齢
完済時の年齢も、借入額と返済期間を決めるうえで見逃せないポイントです。一般的には、定年退職を迎える65歳頃までに完済できる計画が望ましいとされます。
完済時の年齢が70歳、75歳と高くなるほど年金などの収入だけで返済し続ける期間が長くなり、老後の生活費を圧迫するリスクが高まるでしょう。
現在の年齢から逆算し、「何歳までに完済したいか」を先に決め、その範囲内で返済期間や借入額を調整すると、老後の家計も見据えた現実的な資金計画を立てやすくなります。
金利変動の可能性
住宅ローンは数十年単位の契約になるため、その間の金利変動リスクも考慮しておく必要があります。
特に変動金利型を選ぶ場合、将来の金利上昇によって返済額が増える可能性があります。金利が0.5〜1.0%程度上がった場合の返済額を試算し、それでも生活が成り立つかどうかを確認しておくと安心です。
固定金利型を選ぶ場合でも、借入時点の金利水準が適切か、今後の金利動向とあわせて検討することが大切です。金利の変動を前提に、少し余裕を持った返済計画を組むことで、将来の環境変化にも対応しやすくなるでしょう。
年収を考慮して住宅ローンを無理なく返済するコツ
借入倍率を下げるには、頭金を増やす、物件価格を下げるなどの方法が有効です。ここでは、借入倍率を下げるための現実的な対策について解説します。
- 住宅ローン以外の借入を返済しておく
- なるべく頭金を用意する
- 自分にあった金利タイプを選ぶ
- 手元に残す預貯金も考慮する
- ボーナス払いに頼りすぎない
住宅ローン以外の借入を返済しておく
住宅ローンを組む前に、カードローンやリボ払い、自動車ローンなどの金利が高い借入をできるだけ整理しておくことが重要です。
これらの返済が多いと、住宅ローンの返済負担率が高くなりやすく、借入可能額が低くなったり、家計に大きな負担がかかったりします。
完済が難しい場合でも、借入件数を減らしたり、返済計画を見直したりすることで毎月の固定的な支出を軽くしておくと、住宅ローン返済の余力を確保しやすくなるでしょう。
なるべく頭金を用意する
総返済額を下げるための最も現実的な方法が、頭金を増やすことです。頭金を多く用意すれば借入額が減るため、年収に対する借入倍率が下がり、返済負担も大幅に軽くなるでしょう。
たとえば、4,000万円の物件でも頭金を500万円から1,000万円に増やせば、借入額は3,500万円から3,000万円へ減少し、返済総額や毎月の返済額も抑えられます。
頭金が多いほど金利優遇や審査の評価が高くなるケースもあるため、貯蓄・ボーナス・親からの資金援助など、現実的な範囲で頭金を増やすことは非常に効果的です。
自分にあった金利タイプを選ぶ
住宅ローンには、以下のように複数の金利タイプがあり、それぞれ以下のようにメリットとデメリットが異なります。
| 金利タイプ | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 変動金利型 | ・固定金利型より借入時の金利が低い ・金利が下落すれば返済額も下がる |
・返済額が変動するため、返済計画が立てにくい ・利息を占める割合が大きい |
| 固定金利期間選択型 | ・金利を一定期間固定できる ・金利上昇リスクを回避できる |
・固定期間の終了後に「5年ルール」「125%」ルールを適用できない ・固定期間の終了後に再度選択すると手数料がかかる |
| 全期間固定型 | ・契約時点で総返済額が確認できる ・長期的なライフプランが立てやすい |
・ほかのタイプよりも金利が高い ・金利が下落した場合に損をするケースがある |
今後の金利や収入の見通し、リスクの許容範囲などを踏まえ、自分に合った金利タイプを選ぶことが大切です。
手元に残す預貯金も考慮する
住宅購入時は、頭金や諸費用で多額の資金が必要になるため、つい「できるだけ多く現金を投入した方が得」と考えがちです。
しかし、病気やケガ、急な転職、家族の事情などに備えるための生活資金は、必ず手元に残しておく必要があります。目安としては、少なくとも生活費の6ヶ月分、可能であれば1年分程度の預貯金を確保したうえで、残りを頭金に回すのが安心です。
手元資金の厚みがあるほど、予期せぬ事態があっても住宅ローンの返済を続けやすくなるでしょう。
ボーナス払いに頼りすぎない
ボーナス払いを利用すれば、毎月の返済額を抑えやすくなりますが、ボーナスが減ったり支給されなくなった場合に、返済が一気に苦しくなるリスクがあります。
特に、業績に左右されやすい職種や、転職・独立を検討している人は、ボーナスに過度に依存しない返済計画を立てることが重要です。
ボーナス払いを利用する場合でも、「ボーナスが減っても支払える金額か」「ボーナスが出ない年があっても家計が破綻しないか」を慎重に検討しましょう。
基本的には、毎月の返済だけでも成り立つ計画を目指すと安心です。
住宅ローンの年収倍率はあくまで参考程度に把握しよう
住宅ローンの借入額は「年収の6〜7倍」が1つの目安となりますが、最終的に判断すべきなのは「毎月無理なく返せるか」という基準となる返済負担率です。年収倍率だけで判断すると、家計の状況や将来の支出変動を見落とす可能性があるでしょう。
家計に余裕を残しつつ返済を続けるには、返済負担率を25〜30%程度、可能であれば25%未満に抑えるのが理想的です。年収、生活費、将来のライフプランを踏まえ、返済額から逆算して借入額を設定することで、長期的に安定した返済を実現できます。
しかし、実際には住宅ローン以外にも車のローンや教育ローン、クレジットカードの分割払いなど複数の返済が重なり、返済負担率が高くなってしまうケースも少なくありません。
そのようなときは、ローンの返済を1本化して月々の負担を整理するのも選択肢の1つです。
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