会社を経営していると、安定した収入があるように見えても、住宅ローンの審査では会社員よりも厳しく見られる傾向にあります。
特に事業の業績や収入の波、会社と個人の資産分けなどが審査に影響するため、十分な準備が必要です。
この記事では、法人経営者が住宅ローンを組む際の審査基準や必要書類などについて解説します。マイホーム購入を検討している法人経営者や役員の方は、ぜひ参考にしてください。
【この記事でわかること】
- 法人経営者は住宅ローン審査に通らない?
- 法人経営者が住宅ローンに通りにくいと言われる理由
- 法人経営者が利用できる住宅ローンの種類
- 法人経営者が住宅ローンを申し込むときの審査基準
- 法人経営者が住宅ローン審査を受けるときの必要書類
- 法人経営者が住宅ローン審査を受けるときの注意点
法人経営者は住宅ローン審査に通らない?
法人経営者でも住宅ローンを組むことは可能です。ただし、会社員よりも審査のハードルは高く、事業の安定性や収入の継続性が重視されるでしょう。
金融機関は個人の年収だけでなく、法人の決算書や業績をもとに返済能力を判断します。そのため、黒字経営を続けていることや、税務申告の内容に問題がないことが重要です。
適切な準備をすれば、経営者でも住宅ローンを利用できます。
法人経営者が住宅ローンに通りにくいと言われる理由
断定するわけではありませんが、一般的に法人経営者が住宅ローンに通りにくいと言われる背景として、主に以下が挙げられます。
- 安定した収入が証明しにくいから
- 会社の財務状況や決算報告書が審査の判断材料になるから
- 勤続年数や雇用形態がないことで評価が分かれるから
安定した収入が証明しにくいから
法人経営者が住宅ローンに通りにくい理由は、収入の安定性を証明しにくい点にあります。
会社員は毎月の給与明細で一定額の収入が確認できますが、経営者の場合は業績や事業の波により、役員報酬が変動することも少なくありません。
また、節税対策で年収を抑えているケースでは、実際には返済能力があっても表面上の年収が低く見えてしまいます。
金融機関は、安定した収入を重視するため、こうした収入の不透明さが審査に不利に働くことがあるでしょう。
会社の財務状況や決算報告書が審査の判断材料になるから
会社の財務状況や決算報告書が審査の判断材料になることも、法人経営者が住宅ローンに通りにくいと言われる理由の1つです。
金融機関は決算書や納税証明書を求め、黒字経営かどうかや負債、資産のバランスなどを細かく確認します。
たとえ個人の年収が高くても、会社の業績が赤字続きであれば返済能力に不安があると判断される場合があるでしょう。経営が安定していることを客観的に示す、資料の提出が必要です。
勤続年数や雇用形態がないことで評価が分かれるから
法人経営者に勤続年数や雇用形態の概念がないことで評価が分かれることも、住宅ローンに通りにくいと言われる理由の1つです。
会社員の場合、勤続年数が長いほど「安定して働き続けられる」と評価され、住宅ローン審査において有利になりがちです。
しかし、法人経営者には勤続年数の概念がなく、雇用契約も存在しないため、担当者が安定性を判断しづらいといった課題があります。
さらに、設立間もない企業や業績に波がある場合は、事業の継続性を懸念されることもあります。そのため、創業からの実績や安定した取引関係、継続的な売上などを示すことで信頼性を高めることが重要です。
法人経営者が利用できる住宅ローンの種類
法人経営者が利用できる住宅ローンの種類として、主に以下が挙げられます。
- 民間銀行のローン
- 自営業者向けローン・提携ローン
- フラット35などの公的ローン
民間銀行のローン
民間銀行が提供する住宅ローンは、法人経営者でも利用可能です。金利が比較的低く、条件によっては優遇金利を受けられます。
ただし、会社員向けよりも審査が厳しい傾向にあり、決算内容や役員報酬、納税状況まで細かく確認されます。
業績の変動や赤字決算があると、審査の通過が難しくなる場合もあるでしょう。
信用力や知名度などの高い企業の場合や、安定した役員報酬を継続して受け取っている人には向いているローンと言えるでしょう。
自営業者向けローン・提携ローン
経営者や個人事業主向けに用意された住宅ローンもあります。
これらは、事業所得や役員報酬など複数の収入源を総合的に判断してくれるため、通常のローンよりも柔軟な審査を行う金融機関が多いのが特徴です。
また、ハウスメーカーや不動産会社と金融機関が連携して提供する「提携ローン」を利用する方法もあります。
提携ローンでは審査基準が明確で、金利優遇や手続きの簡略化が受けられることもあり、経営者にとって利用しやすい選択肢です。
フラット35などの公的ローン
フラット35は、住宅金融支援機構と民間金融機関が提携して提供する長期固定金利のローンです。
経営者や個人事業主でも利用可能で、収入の安定性よりも「返済比率」や「物件の価値」を重視して審査される点が特徴です。
一般的に、審査書類として確定申告書2〜3年分が必要になりますが、事業の黒字・赤字にかかわらず利用できるケースもあります。
金利が一定で将来の返済計画を立てやすく、経営リスクを抑えたい経営者に適したローンです。
法人経営者が住宅ローンを申し込むときの審査基準
法人経営者が住宅ローンを申し込むときの審査基準は、主に以下のとおりです。
- 借入時年齢・完済時年齢
- 健康状態
- 返済負担率
- 担保評価
- 年収・所得
- 業績
住宅ローン審査では、会社員と同様に返済能力や信用情報、年齢などが基本的な判断材料になります。
ただし、法人経営者は役員報酬や会社の決算状況なども審査に影響するため、収入の安定性や事業の継続性を示す資料が重要です。
勤続年数や雇用形態など会社員と共通する評価項目もありますが、法人経営者特有の書類準備や事業状況の提示が、審査通過のポイントとなります。
※参考:【フラット35】ご利用条件 などをもとに一般的な情報を基準に作成
借入時年齢・完済時年齢
住宅ローンでは、借入時の年齢と完済予定年齢が重要な審査ポイントです。
金融機関は、完済時に年齢の上限を超えていないかを確認し、返済期間が適切かどうかを判断します。法人経営者の場合も基本的な基準は同じですが、役員報酬や事業収入が変動しやすい点が考慮されることがあります。
そのため、完済時年齢に余裕を持たせた返済期間を設定することで、万一の収入変動にも対応しやすく、審査通過の可能性を高められます。
健康状態
住宅ローン審査では、団体信用生命保険(団信)への加入可否が重要な判断材料となります。
健康状態に問題があると、団信に加入できず審査が通りにくくなることがあるでしょう。
法人経営者も会社員と同様に、健康診断や告知書の提出が求められますが、特に経営者は万一の場合に事業資金や家族への影響を考慮する必要があります。
そのため、団信の加入条件を事前に確認し、健康状態に応じた対応策を検討しておくことが、安心してローンを組むために重要です。
返済負担率
返済負担率とは、年収に対して年間のローン返済額がどの程度を占めるかを示す指標で、住宅ローン審査で返済能力を判断する基準の1つです。
法人経営者も会社員と同様にこの比率で評価されますが、役員報酬が変動しやすい場合は注意が必要です。
返済負担率が高すぎると、事業資金や生活費に影響が及ぶ可能性もあります。
安定した返済を続けるためには、余裕を持った返済比率で無理のない借入額を設定し、長期的な資金計画を立てることが大切です。
担保評価
住宅ローンでは融資の安全性を確保するために、購入する物件自体が担保として評価されます。
金融機関は物件の立地や築年数、資産価値などをもとに評価額を算出し、融資可能額の判断材料とします。会社員などの場合と基準は共通ですが、法人経営者は収入の変動リスクがあるため、物件の担保評価が返済能力の補完要素として重視されることがあります。
そのため、購入予定の物件の価値や将来的な資産性を事前に確認し、担保として十分な評価を得られる物件を選ぶことが、審査通過のポイントです。
年収・所得
法人経営者の住宅ローン審査では、直近の役員報酬や確定申告上の所得が主要な評価対象となります。
会社員のように給与明細だけで判断されるわけではなく、会社の決算書や収入の安定性も重要です。特に過去数年の黒字実績や利益の推移を示すことで、金融機関に返済能力の安定性をアピールでき、融資審査で有利に働く可能性が高まります。
安定した年収・所得を証明するためにも、事前に必要書類を整えておくことが重要です。
業績
住宅ローン審査では、会社や事業の継続年数などの業績も重要な評価ポイントです。
創業間もない企業よりも、安定的に黒字を計上している会社の方が金融機関からの信用度が高く、審査通過の可能性も高まるでしょう。
法人経営者は、過去の決算書や経営実績を明確に提示することで、役員報酬や事業収入の変動リスクを補い、返済能力の安定性を示せます。
法人経営者が住宅ローン審査を受けるときの必要書類
法人経営者が住宅ローン審査を受けるときの必要書類は、主に以下のとおりです。
- 源泉徴収または確定申告書
- 課税証明書または納税証明書
- 決算報告書
源泉徴収または確定申告書
法人経営者が住宅ローンを申し込む際には、源泉徴収または直近2〜3年分の確定申告書の控えが必要になります。これは、個人としての所得や課税状況を確認するための重要な資料です。
特に、役員報酬や不動産所得などの収入源が明記されているため、金融機関はこれをもとに返済能力を判断します。
確定申告をする場合は白色申告よりも、青色申告の方が収支の内訳が明確で信頼性が高いとされる傾向にあるため、可能であれば青色申告を行っておくと審査上有利に働く場合があります。
課税証明書または納税証明書
課税証明書や納税証明書は、税金を滞納せずに納付していることを証明する書類です。
金融機関は、経営者としての信頼性や財務の健全性を確認するために、所得税や法人税の納税証明書を求めることがあります。
税金の未納や延滞がある場合、返済能力や資金管理に不安があると判断される可能性があるため、注意が必要です。
定期的に納税状況を確認し、書類を整えておくことで、スムーズに審査を進められます。
決算報告書
法人経営者の場合、会社の経営状況も住宅ローン審査の対象となるため、少なくとも直近3期分の決算報告書(損益計算書・貸借対照表など)の提出を求められます。
金融機関はこれらの書類をもとに、事業の安定性や返済余力を総合的に判断します。特に、継続して黒字経営であること、負債比率が適正であることが評価のポイントです。
法人経営者が住宅ローン審査を受けるときの注意点
法人経営者が住宅ローン審査を受けるときには、以下の点に注意が必要です。
- 融資額が少なくなる可能性がある
- 優遇金利が適用されない場合がある
- 事業資金とのバランスで返済計画が圧迫される
- 住宅ローン控除は2年目以降も確定申告が必要になる
融資額が少なくなる可能性がある
経営者の場合、金融機関は事業収入の安定性を厳しく見極めるため、希望額より融資額が抑えられることがあります。
役員報酬が安定していない、あるいは節税で所得を低くしている場合は「返済能力が低い」と判断されることもあるでしょう。
融資額を確保するには、役員報酬を適切に設定し、過去数年の黒字実績を示すことが重要です。
優遇金利が適用されない場合がある
民間銀行の住宅ローンでは、給与所得者向けに低金利の優遇制度が設けられていることがあります。
しかし、法人経営者は収入が事業業績に左右されやすく、変動リスクがあると判断されるため、優遇金利が適用されない場合や条件が厳しくなることがあります。
そのため、経営者は複数の金融機関のローンを比較し、事業所得や役員報酬に対応したプランを選ぶことが重要です。
事前に相談して条件を確認しておくことで、より有利なローン条件を得やすくなります。
事業資金とのバランスで返済計画が圧迫される
法人経営者は、住宅ローンの返済と会社の運転資金や設備投資などの事業資金とのバランスを考える必要があります。
返済額が多すぎると資金繰りが圧迫され、事業運営に支障をきたすおそれがあります。事業のキャッシュフローを十分に考慮し、余裕を持った返済比率でローンを組むことが重要です。
必要に応じてファイナンシャルプランナーに相談し、返済計画と事業資金の両立を検討すると安心です。
住宅ローン控除は2年目以降も確定申告が必要になる
法人経営者が住宅ローン控除を利用する場合、初年度だけでなく2年目以降も毎年確定申告を行う必要があります。
会社員のように年末調整で自動的に控除されることはないため、自分で手続きを行わなければ控除を受けられません。
毎年、住宅ローン残高証明書や必要書類を揃えて期限内に申告します。これにより、税制上の優遇を確実に受けられ、返済負担の軽減につなげられるでしょう。
法人経営者の住宅ローンに関するよくある質問
最後に、法人経営者の住宅ローンに関するよくある質問に回答します。
- 個人事業主と法人経営者で住宅ローン審査の違いはある?
- 融資額や金利は一般の会社員と比べてどうなる?
- 法人経営者が住宅ローン審査に落ちる原因は?
融資額や金利は一般の会社員と比べてどうなる?
法人経営者の住宅ローンは、会社員向けローンに比べて融資額が想定より低くなったり、金利優遇が受けられなかったりします。
これは、収入が事業業績に左右されやすく、安定性の評価が難しいためです。
ただし、決算書や確定申告書で安定した収入を証明できれば、融資額や金利が改善される場合もあります。複数の金融機関を比較し、経営者向けプランを利用することがポイントです。
法人経営者でも準備次第で住宅ローン審査は通る
法人経営者でも、事前に書類を用意し、会社の経営状況や個人の収入を明確に示せば住宅ローンを組むことは十分可能です。
融資額や金利で不安があっても、返済計画をしっかり立てることで審査に通りやすくなります。
複数のローンを抱えている場合は、住宅ファクトリーのローン1本化を活用することで、借入を整理し、返済負担を明確にしながら審査に臨めます。
神奈川・東京・千葉・埼玉エリアを中心に数多くの住宅ローン通過実績があり、各金融機関との独自のパイプがあります。安心して家づくりを進めたい方は、住宅ローンと不動産のプロである、住宅ファクトリーにぜひご相談ください。








